インプラント、というと皆様はどうようなことをお考えでしょうか。色々と質問を受けますがだいたい以下の事柄が気になるようです。
1.大きな手術のようで、こわい。
2.痛そうだし、手術中に多量に出血する。
3.手術後、すごく腫れる。
4.体に合わなくて、直ぐだめになってしまうことがあると聞く。
5.どのくらい持つのかわからない。
6.年齢が高いのですが、インプラントができますか?
7.非常に費用がかかる。
これらのことに答える前に、私自身のインプラントとの関わりについてお話しましょう。
私がインプラントについて学び始めたのは30年程前のことです。当時は京セラ(株)のバイオセラム結晶サファイアインプラントが開発され、一般の歯科医院でもインプラント手術が行われるようになった頃でした。下の写真は1983年に行った例で下顎の左右臼歯の部分にインプラントが入っています。この方は30年経った今でも義歯ではなく、インプラントはお口の中で機能しています。ただ、このタイプのインプラントには問題がありました。インプラントと骨が緊密にしっかりと付かないのです。つまり、歯周病になってしまった歯のようにインプラントが少し揺れてしまうのです。そのために隣接するご自分の歯と連結する必要がありました。
こうした問題がありこのタイプのインプラントは次第に使われなくなってしまいました。私自身は前のタイプのインプラントで思うような結果が得られなかったこともあり、数年の間インプラントから遠ざかってしまいました。
しかしながら丁度その頃1980年代に北欧のスウェーデンで金属のチタンが骨に密接に着くことが発見され、歯科のインプラントにも応用されようとしていました。私が新しいインプラントについての講習を最初に受けたのは1991年のことです。確かに今度のインプラントは骨に密着し成功すればかなり強固にしかも長期間に渡り噛む機能を果たすことが出来そうなことが分かりました。その後研修を重ね、患者様の理解にも支えられてこれまでインプラント治療をしてこられました。
私はインプラント治療についてこのホームページ上で詳しく説明しようとは思っていません。来院していただき私がこれまでインプラント治療をしてきた様々な場合を示して説明させていただき、治療費の見積りをして十分にご理解を得た上で治療に入ります。
当院で使用しているインプラント:ストローマン・ジャパン株式会社
上の質問の1、2、3について言えば私の行っているインプラント手術の方法でしたら、例えば下の写真のような臼歯の部分に2本入れるのにだいたい30分程です。歯肉を切開することなく手術していますので、手術後の腫れ、出血、痛みは今までの経験ではほとんどありません。ただし、残っている骨の状態によっては切開して行っております。
4、5番目の質問です。私の行っているインプラントはスイスのStraumann社のシステムで行っています。インプラントの材質はチタンで、生体適合性に優れておりアレルギーの原因になる可能性は極めて低いとされています。私はこれまでに延べ214人の患者様に私の医院で479本のインプラントをしてきました(平成4年10月~25年9月)。統計についてはこのページの下の部分にグラフをのせてあります。何らかの原因で私自身が撤去したか、または脱落してしまったインプラントは9本です(1.8%)。原因はほとんど一緒に結んであった天然の歯が歯周病等により揺れてしまったことによります。それらの方々については、脱落したインプラントに隣接した丈夫な骨の部分にインプラントを入れて噛み合わせを回復しました。私が行った例では10年以上経過した例は14本ですが、現在でも問題なく噛むのに役立っています。私はすべての治療がインプラントで可能とは思っていませんし、従来の取り外しできる義歯でも十分に食べる機能は得られると考えています。インプラントは歯が欠損して食べるのが不自由な方への一つの解決策であることは間違いではないと考えています。
インプラントは経験を積んだ歯科医師が行えば安定性そして確実性のある医療の一つと言えるのではないでしょうか?
6番目の質問について言えば、顎の骨の状態が良ければ年齢にはあまり関係ないと考えます。もちろんお体の状態があまり良くない場合は差し控えた方がよいのですが。私の手術した方で最高齢の方は78歳ですが、ここ数年60代後半以上の方が増えており最近2年間では8名の方が70代後半でした。80歳までに20本の歯を残そうという「8020運動」についてはご存じと思いますが、すでにわが国では80歳以上の25%の方々が達成しています。部分入れ歯がなかなか合わない方にはインプラントは一つの解決策であると考えています。下の写真は70代総入れ歯の方にインプラントした例ですが5年を経過しておりますが現在の所、問題なくお口の中で機能しています。このようにまったく歯が無くなってしまった方でも可能なのです。
7番目の質問ですが、インプラント手術は1本あたり15万円を基本としています。診断料等については頂いておりません(ただしCT検査をした場合は実費をいただいております)。インプラントの上にかぶせる金属冠や陶材冠などは別料金となりますので、総額で1本あたり20万円前後です。料金については患者様と直接に十分ご相談させていただきます。
本院の基本方針にあるように、私としてはなるべく保険診療で実施できることは保険の範囲で診療しようと考えています。しかしながらインプラントはこれだけ安定性があり患者様の満足度も高い方法でありますが、保険診療には入っていません(高度先進医療の認可された大学病院は例外ですが)。私は一人でも多くの方がインプラント治療の恩恵を受けられるように限定的でも保険に入れるべきとの意見ですが、医療費が増加し続けている中ではその道のりは遠そうです。多くの方が加齢とともになる白内障の手術が保険適用になってすでに20数年が経っているのに・・です。皆様はどのようにお考えでしょうか?
このような義歯の方でもインプラントにすれば、義歯の違和感もなく快適な食生活が過ごせますね。
上ののグラフは私が当医院でインプラントを埋入させて頂きました総数479本を年ごとに表示したものです。平成25年9月現在で私自身が確認している例では平成10年に実施した症例が最も長い方ですが、現在も問題なく噛むことが出来ています。
しかしながらインプラントの脱落に至った例もあります。私自身が把握しているものでは、10年後に2本、7~9年後に2本、3~6年後に3本、1~2年後に2本確認しています。479本中の9本で1.8%ですが、インプラントは失敗の許されない手術です。いずれの方の例も隣接する場所にインプラントを再埋入するなどして対応してまいりました。原因としては、自然の歯と同じように
歯周病になってしまったような例、インプラントに被せた歯の脱落による例、支える骨の量が少なかった例などがあります。
2018年4月にCTスキャンを導入しましたので、より精度の高いインプラント治療ができるようになりました。今後とも研鑽を積んで行く所存であります。